ふたたび有元利夫のことなど

hogodou2007-05-06

米倉守の『早すぎた夕映 評伝有元利夫』を読了。
幾つか示唆的なヒントをもらう。有元利夫は、目標は?と問われて、「雅、放胆、枯淡、稚拙、鈍、省略、不整美、無名色、無造作」と答えたという。彼は、白いキャンバスに「捨て絵の具」をつけておき、描きかけの絵とともに壁にかけておき、それを見つめる。そして、絵の方からお呼びがかかるのを待つ…そのような描き方…。「しみみたいに垂れた何気ない色とか形が」呼んでくれると、彼は壁からキャンバスをはずし、手元に引き寄せて描き始める。
「壁のしみからどれほど豊かな連想が湧いてくるか。それをレオナルド・ダ・ヴィンチは美しい言葉で描いていますが、僕が描きはじめの「捨て絵の具」をなるべく無造作にいい加減に無責任につけておくのも実はそういうことなのです…とにかく意識や作為を働かせるということは、一種の枠をはめること。ひとりの人間の作為や意識など、無造作で無作為なものが掻き立てる連想に比べたらちっぽけなものだと思うからです」
その描き方は、全作品集に収録されている未完成作品からも伺う事が出来る。彼は38歳で逝ってしまった。改めて、自分の年齢が彼の死んだ年齢を越えている事に気づく。
ゲオルギー・シェンゲラーヤ監督の『ピロスマニ』が見たくなる。グルジアの画家ニコ・ピロスマニを描いた69年に撮られた作品。
今日のiPod キース・ジャレット『STAIRCASE』
音が舞う。