『幽閉者』がチョンジュ国際映画祭で上映されました。

hogodou2007-05-04

足立正生監督の『幽閉者』が、第8回チョンジュ国際映画祭Cinemascape部門に出品され、上映されました。
http://english.jiff.or.kr/
以前の日記にも書きましたが、足立監督は外務省から旅券の発券を拒否されたので、チョンジュから招待されていたのに行く事が出来なくなってしまった。代わりに主演の田口トモロヲさんが、監督のメッセージを携えて渡韓。Q&Aと舞台挨拶をお願いしました。ここに、チョンジュで田口さんが読み上げた、足立監督のチョンジュの観客の皆さんへのメッセージを掲載したいと思います。


チョンジュ映画祭の皆さん、
チョンジュ映画祭に「幽閉者」を招待し上映してくれた皆さん、
映画を愛している皆さん、
映画「幽閉者」を観てくれた皆さん、
どうも、有難う。
映画「幽閉者」は、今私が最も訪れたい国・韓国を訪れ、皆さんに見て貰うことが出来ました。
ただ残念ながら、映画祭へ招かれた私自身は、日本から出られません。日本政府に旅券の発給を拒否されたからです。
実は、チョンジュ映画祭の直前に招待されたドイツでの映画祭にも、35年前の1973年にHI事件を起こした日本赤軍の声明をパリで記者会見して読み上げたという理由で、フランスが入国拒否する可能性があり、ヨーロッパ27カ国も同じ歩調を取るため、やはり旅券発給が拒否され、行けませんでした。
私は、どうも自分のことになると感覚が鈍いようですが、この事態に直面して、一つの現実がやっと分かりました。
つまり、どうやら、私は映画『幽閉者』の主人公と同じように、日本に幽閉されているのです。
何とも、古めかしい物語の中に、私は住まされているようです。
現代は、人々が現実ではなくインターネットのヴァーチャルワールドで、世界中を縦横無尽に駆け巡り、資本の流れだけでなく、情報やイメージ、個々人の意志の交流は、国境やあらゆる障碍を一飛びで乗り越えて、繋がって行くことが可能です。
そんな開かれた時代の中で、日本に幽閉されている私は、勿論私の過去の行動責任が今も問われていると同時に、身体性をともなった映画表現を求め続ける私に、更に想像力を飛翔させ続け、その想像力の産物である映画を作り人々にもっと喜んでもらえるように、映画を愛する皆さんがわざわざ過酷な条件を突きつけているのかもしれません。
だから、今回は皆さんにお会いすることは出来ませんでしたが、来年は更に新しい映画つくりを続けて、作品とともに私自身の身体も訪れたいと思っています。
チョンジュへ、チョンジュへ。
思いを馳せながら。
                   2007年5月1日  足立正生