ポップソングを作る。

hogodou2008-12-27

映画は、とても厳しい状況にあるのだと思う。
そんな年末である…。
かといって、辞めますというわけにもいかないところが辛いところだ。
これまでと何もかも違うやり方を探さなければならないのだろう。
昔から、例えば映画の配給や宣伝の事を考える時、同業の仕事を顧みないようにしている。
でも、必ず初心みたいなものに戻ろうとする時に、読む本がある。
菊池信義さんの『装幀談義』。
それから、平野甲賀さんの『日常術 平野甲賀[装幀]術 好きな本のかたち』。
「装幀」ということと、映画の配給、宣伝ということの考え方が、とてもよく似ているような気がするのだ。
この二冊の本から、どれだけのことを教えられたか分からない。
今回は、平野さんの『日常術 平野甲賀[装幀]術 好きな本のかたち』を読む事にする。
ゆっくり読みたい。
この本は、平野さんの装幀についての考え方を俯瞰しつつ、晶文社の編集者であり、ウィリアム・モリスなどの研究者でもあった小野二郎さんの著作集の一巻目である『ウィリアム・モリス研究』を装幀する過程がドキュメントされる。
平野さんは、この本を段ボールの函に入れ、本体はフランス装にした。
フランス装は、本を買った人が自分で表紙をつけなおすということを前提にしている。要するに、製品としてのフランス装の本とは、完成品ではないのだろう。
その本を手に取った人たちが、ひとりひとりそれぞれで、その本を完成させるのである。
栃折久美子さんたちの運動によって日本でもルリュールをやる人がふえてきたらしい。しかし、この著作集を買った読者たちの多くが、ぼくがデザインした表紙や函をはぎとって、実際に自分で造本や装幀をしなおすとは、とうてい思えない。それなのに「フランス装」とか「ルリュール以前の本」にこだわっているのは、ぼくのうちに、小野さんの仕事はまだ完結していないという思いこみがあったからだ。/その思いこみにかたちを与えようとして、わざわざ半製品みたいな本をつくることにこだわる。結局、それがっこの本のデザインをつらぬく基本的なコンセプトになった。」
鈴木卓爾組『私は猫ストーカー』のラッシュを見る。
とてもいい。
面白い作り方をしているのに、“普通の映画”だ。
ぼくらの目標には、ブライアン・ウィルソンがいる。
ポップソングを作るということは、とても過激で、挑戦的で、なのに誰にでも口ずさむ事ができる美しいメロディをもっていて、全然難しくない、というとても難しい作品づくりのことなのだ。