いさかい

hogodou2008-10-19

山崎裕組『トルソ』のヒロイン、ヒロコを演じてくれた渡辺真起子さんが出演しているTPTの舞台『いさかい』を観に、森下のベニサン・ピットへ。
渡辺さんは、『トルソ』を終えて、すぐにこの舞台の稽古に参加。
しかも、『いさかい』は、18世紀フランスの劇作家マリヴォーの戯曲である。
しかし、観ていて、この戯曲がすこぶる面白い。
生まれたばかりの四人の男女の子供を、世界から隔離し、お互い顔を合わせないようにして育てる。そして、ある年齢になった時、男女それぞれをカップルとして会わせるのだ。
「世界で最初の心変わり、世界で最初に不実を犯したのは男性であると、あなたは主張する、無論わたしもですが、しかしその真偽は、世界と社会の始まりをみてみなければわからない」
「…そう、当時のオトコとオンナ、そして当時の世界とそこで生まれた最初の恋愛がありのままに、いえ、そうであっただろう状態のまま、目の前に現れます。昔起きたことのそのものではなくても、本質は同じはず。ご覧いただくのは、世界の始まりと同じ状態にある心たち、世界の始まりと同じまっさらな魂たち、あるいはもっと純粋無垢なものが見られるかもしれません」
男と女、世界で最初に不実だったのはどちらなのか?
実験が始るのだ。
エグレとアゾール。
アディーヌとメスリス。
四人の男女。
いさかい。
彼らは、実験用の小動物のように育てられ、世界に放たれた。
放たれた彼らは、猛スピードで恋愛をし、彼らの人生を蕩尽する。彼らの心臓はきっと普通の三倍も四倍も速く打っていることだろう。
その姿を見つめる王子とエルミアンヌ。
恐ろしい戯曲だ。
観ているうちに、われわれはまだ人を実験する残忍さについて充分に知らないことに気付く。
マリヴォーはサドの同時代人でもある。
そう言えばジャック・リヴェットの『彼女たちの舞台』でビュル・オジエの演劇学校で生徒たちが演じていたのもマリヴォーの『二重の不実』だっけ。
22日まで。www.tpt.co.jp