しかし、われわれは…楽しむことだ。

hogodou2008-07-19

8/23からシネセゾン渋谷のレイトショーで公開されるジュリアン・テンプル監督『NO FUTURE:A SEX PISTOLS FILM』と10月にやはりシネセゾン渋谷で公開されるドン・レッツ監督『THE PUNK ROCK MOVIE』を続けてみる。
パンク・ロックのドキュメンタリーとしては対称的な2本。
どちらも以前から好きなフィルム。
『NO FUTURE:A SEX PISTOLS FILM』は、セックスピストルズの姿を追い求めたドキュメンタリー。ジュリアン・テンプル監督は、無名時代からセックスピストルズと撮っていた。そのフッテージに、ジョニー・ロットンをはじめとする現在のメンバーたちのインタビュー、それにニュースやテレビ番組、アニメなど様々な映像をリミックスした作品であり、カットアップされた映像のコラージュとしても相当に面白い。
現在のメンバーたちは、撮られてはいるのだ、その姿は“影”であることも特筆すべきだろう。
映画は、暴れ回るピストルズを、“大人”たちが、旧弊な共同体的な倫理で包囲しつつ、金儲けのために群がる姿を皮肉ってみせる。そして、その“大人”たちに謀殺されたかのようにみえるシド・ヴィシャスのことを語るメンバーたちのインタビューが痛ましい…。
『NO FUTURE:A SEX PISTOLS FILM』がピストルズへのレクイエムとして、どこか哀調を帯びるのに対して、ドン・レッツ監督の『THE PUNK ROCK MOVIE』には、開放的な明るさに満ちている。映画から「楽しむことだ」と笑うドン・レッツの笑い声が聞こえてくるような気がする。確かにパンクは包囲されている。しかし、われわれは…楽しむことだ。ザ・クラッシュの「白い暴動」で踊れ!
70年代後半からロキシー・クラブでDJとして活躍し、レゲエとパンクの橋渡しをしたドン・レッツ。オルタナティブTVが、リハーサルでレゲエ・ナンバーを練習しているシーンが好きだ。
写楽の小説を書いた小田仁二郎のことを思い出したので、杉浦日向子さんの『百日紅』を読む。
こっちは、北斎とその娘であるお栄=応為、英泉たちの姿を描いた傑作マンガである。この作品が好きだ。何度読み返したか。どの章も好きなのだが、其の二八「野分」が格別に好きだ。生来盲目であった北斎の末娘・猶はきっと病で死んだのであろう。もの凄い風が吹く。猶の死を予感し、駆けつけたお栄に、北斎の後妻・ことは言う。
「いっちゃったよ」。
何度読んでも、このラストに戦慄する。
杉浦さんは恐ろしい作家であると思う。
そう言えば、小田仁二郎は、病死の後、家族が気付くと、彼は一切の自分に関する印刷物、手紙、ノートの類はもとより写真さえも「身辺から抹殺」していたという。
春信、北斎写楽、応為、英泉、芳年、清親…江戸の絵師たち。これに絵師ではないが田之助も加えておこうか。いつか彼らの後ろ姿を捉えてみたい。