ロード・キル。または「これで終わりなの?」

hogodou2008-05-12

なぜか腰が痛い。はて…?
奥原浩志監督と打ち合わせをしたり、久しぶりに赤犬のアキラくんと電話で話したり。
合間合間にバリー・ギフォードの『ナイト・ピープル』を読み直す。
幾つかの小説を断章化して、モザイクというか、連句的に組み合わせた(縒り合わせた)小説だ。話は、ビック・ベティとキューティー・アーリーという前科者の女ふたりの疾走から始る。中絶反対を標榜する牧師ダラス・ソルトとそれに反対する教会を率いるディリス・ソルトの近親相姦。ダラスを撃ち殺す堕胎医ベアティフィカ・ブラウン。小説は、そのベアティフィカに関わったイージー・アール・ブレイキーの話へスピンオフし、彼の逃避行の途中に乗ったバスに隣り合わせ、大事故から奇跡的に生還した少女マーブル・レッスンの話へ…。
彼女たちの移動から、彼の移動へ。小気味いいほど切り詰められたクールなギフォードの文章。そこには無数の死体が転がり、人は汚辱にまみれたまま、あっけないほど簡単に死んでいく…。ロード・キルとは、ハイウェイを横切ろうとした動物が、車に轢き殺されることを言うと聞いたことがある。そんな感じ。
世界は、かくのごときだ。
読みながら、こんな文章が頭の中をグルグルする。
「みんなまたひとりぼっちだ。こういったことはみんな実にのろくさくて、重苦しくて、やり切れない…やがて私も年をとる。そうしてやっとおしまいってわけだ。たくさんの人間が私の部屋にやって来た。連中はいろいろなことをしゃべった。大したことは言わなかった。みんな行っちまった。みんな年をとり、みじめでのろまになった、めいめいどっか世界の片隅で」
これはセリーヌの『なしくずしの死』の冒頭の文章である。
なんか、そんな感じだ。
HMV感染者たちのバンド、ファティマ・ヴェルダ・アンド・ザ・バンドエイズ・テイク・イット・ワン・デイ・アット・ア・タイムのリーダー、ファティマ・ヴェルダは、彼女自身もHMV感染者であり、その最期の時、「これ以上望むことはできないほどの喜びと満足を手に入れたわ」と言った後、ファティマは呼吸困難に陥った。

「ちくしょう」ファティマは喘ぎながら言った。「これで終わりなの?」

『ナイト・ピープル』ももうすぐ読み終わる。