「用無し」の人生。

hogodou2008-05-04

猫に噛まれた傷が腫れて、GWがちょっと心配だったので医者へ。
破傷風の注射をうたれ、抗生物質の薬をもらい、手をガーゼとネットでグルグル巻きにされる…。いやはや。
相変わらず示唆的な滝本誠さんの『渋く、薄汚れ。ノワール・ジャンルの快楽』を読む。筆者本人も「社会憎悪が見え隠れする」という文章を読んでいると、「ノワール」というジャンルは、神の一瞥を自ら拒否し、その一瞥から見を引き剥がそうとする「破壊衝動」と言い換えることができるかもしれないと、思う。
「『拳銃の報酬』(59)は、『アスファルト・ジャングル』(50)、『現金に体を張れ』(56)と並ぶケイバー(強奪)系ベストであろう。映像自体の孤独の表出、特にニューヨークをこれほど空しいまでの白のカンヴァスとして捉えたキャメラはそれまでない。とにかく人間の営為を小さく見せたいとするキャメラの意志がある。存在を白いカンヴァスに消したいというような。ロングで静的、あるいは詩的といっていいショットが多く、その中でベラフォンテが、ライアンが、そして計画の立案者エド・ベグリーがたたずみ、動く。まさにノワール(黒)の名匠ロバート・ワイズが最終段階で到達した白い空間意識だ。」
滝本さんの話は、キューブリックからウィージーへ、ジム・トンプスンジェイムズ・エルロイチャールズ・ウィルフォードから『孤独な場所で』、『ローラ殺人事件』、『狩人の夜』、エドワード・ホッパーへと尻取りのように飛ぶ。
フランク・シナトラが主演した『三人の狙撃者』が、ジャック・ターナーの『過去を逃れて』が、ジョゼフ・H・リュイスの『拳銃魔』が見たくなる。そうだ、『拳銃魔』を初めて見たのは、ドリュー・バリモアが主演でタマラ・デイビスが監督した『ガン・クレージー』を配給したときのことだ。試写にいらした山田宏一さんが、このビデオあげるね、とダビングした一本のビデオを下さった。それが、見たくてたまらなかったジョゼフ・H・リュイスの『拳銃魔』だった…。画質は、ダヴィングを繰り返したせいか最悪だったが、そんなの全然問題にならなかった。そのビデオを何度見返したかしれない。でも、その『拳銃魔』もDVDで見ることができる…。
合間に(何の合間だ…)シオドア・スタージョンの『輝く断片』を読む。凄い…。絶望的な恋愛。用無しと言われ続けた「おれ」の人生。読み終えて、陶然とする。