神さえ一瞥もくれない存在

hogodou2008-04-27

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの「接続された女」を読む。
うーん、傑作だと思う。凄い。なんの感情移入もない小説。出てくる人間は、クズばかり。しかし、この短編を最後まで読んで来て、なぜか、そしていつの間にかこの小説のヒロインである“怪物”P・バーグを愛してたことき気付かされる。なんてことだ、というのが、この短編を読み終わった最初の言葉…。それにしても、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア自身の生涯の興味深いことったらない。本名は、アリス・シェルドン。男性ではない。女性である。子供時代をインド、アフリカで過ごし、10代にはグラフィック・アーティストを志し、20代には左翼運動に没頭、1942年に志願して陸軍に入隊し、ペンタゴンの中枢で働く。軍籍を離れるが、52年政府から要請されCIAの発足にあたりその設立に関わった。55年、政治や軍事の秘密より自然の秘密を知りたいと辞職願を出して姿をくらますが、結局は夫のもとに戻ると、40代後半には大学に入り直して実験心理学を学び、博士号を取得。講師を辞める頃に、覆面作家ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアとしてSF小説を書き始めると、“彼”はSF小説界に衝撃を与える…。ずっと謎の作家だったが、77年に女性であることを明かし、正体を現した。87年、かねてからの同意どおり、重病の夫を射殺後、同じ銃で自殺する…。
やれやれ。しかし、小説はひどく面白い。
先週は、秘策(?)の打ち合わせが続く。別に隠すほどの“秘策”でもないんだが。安藤尋監督とは、相変わらずある漫画をめぐって、あれこれ。日向朝子監督は、また打ち合わせの70%が野球の話で終る。“桃まつり”で再会した佐藤有記監督とは、「逃げ切る」ことを巡って、やはり、あれこれ。カメラマンの山崎裕さんとは、あるシノプシスを巡って、あれこれ。山崎さん、女優Wから「変態変態」と「変態」呼ばわりされる。が、ほんとに「変態」なんだから仕方がない…。
「変態」ついでなので、滝本誠さんの『きれいな猟奇』を読む。バリー・ギフォードマイケル・ウィンターボトム監督『バタフライ・キス』→ロバート・R・マキャモン『マイン』と続く「フェミニズムのエッジ」が示唆的だ。滝本さんは、『バタフライ・キス』について、「殺人事件を追う警察、という図式をいっさい排除しているため、「犯罪」という権力システムが作り上げた汚れは映画にはない。ただ「男殺し」が純粋状態で提示されるのだ。どうやら、警察だけでなく、どうも神すらヒロインの殺人に一瞥もくれないかのようだ」と書く。『マイン』についても、「男が入り込む余地などまったくない」と。
「神さえ一瞥もくれない」存在とは、何か。
心が騒ぐ。