幼い哲学

hogodou2008-04-17

石井桃子さんが亡くなってしまった…。
出がけ、不意に『幼ものがたり』を読もうかと思い、鞄に入れたのだ。昼間ネットで検索すると、4月2日に101歳でお亡くなりになったという記事が出て来た。悲しい。子供の頃から、石井さんの本を読んで育ってきたと言っても過言ではないだろう。『クマのプーさん』シリーズをはじめ、『ムギと王様』『りんご畑のマーティン・ピピン』も好きだ。そして特に自伝ともいうべき『幼ものがたり』と『幻の朱い実』を偏愛している…。
友達と別れて家へ帰るまでの間に、幼い石井さんは「神様のこと」や「死ぬことなど」を夢中になって考える。幼い頃の「夢想と思索」。石井さんは、それを「幼い哲学」と読んだ。そして、その「幼い哲学」の時期は、「夢中で本を読む」ようになることで、終わりを告げる。
「いまふり返ってみると、もう少しあとまで私なりの幼い哲学をつづけてみたかったと思う」
私事になるが、祖父の妹のアヤさんが、数年前、いたずら描きのような絵と綴り方で幼い頃の回想を一冊にまとめた。尋常小学校や家族との日常に混じって、彼女が読んでいた本や見た映画のことが書かれている。
「今日はみんなで『お嬢さん』(小津安二郎!)を見に行くつもりでいたけれど、禄ちゃんがとてもぐずるのでとうとう吾妻座へ行った。『月世界の女』(フリッツ・ラング!!)がとてもチャーミングだった」
『トム・ソーヤ』を読んでいた少女は、いつしか探偵小説が好きになり、大下宇蛇児を読み、シャーロック・ホームズやアルセーヌ・ルパンを読むようになる。そして、小学校六年生の時「アヤちゃんは吉屋信子の様な作家になりたいと思った。だから一生結婚しないことに決めた」。
この探偵小説好きの少女のマセた決意を読むのが好きだ。
そう言えば、石井さんが翻訳したファージョンの『ムギと王様』の前書きにも、「本の小部屋」で読書に耽溺する少女の姿が書かれている。
とてもいい。