キラ・ムラートワ監督の新作

hogodou2008-01-30

甲斐田祐輔監督の『砂の影』足立正生監督の『幽閉者』は、揃って第37回ロッテルダム国際映画祭で上映中。甲斐田監督は、もちろん現地入りしている。そして、足立監督は…。前回のチョンジュ国際映画祭の時もそうだったのだが、外務省にパスポートの申請をしたのだが、今回も同じ理由で受理されず。映画だけが、世界を回っている…。
出発前の甲斐田監督と電話。改めて、ロッテルダム映画祭のプログラムを観る。すると、キラ・ムラートワ監督の新作『Two in One (Dva v odnom) 』が出品されている! 『長い見送り』が好きだった…。もちろん、日本で公開されていないだけで、ずっと撮り続けているのは知っていたのだが。観たい。しかも、スチールがなぜかエロい。これを観るためにだけでも行けば良かったと、後悔する。
数年前のロカルノ映画祭に参加した時、その年はソ連映画の特集上映をしており、日本では公開されていないボリス・バルネット監督の作品を観たりしたのだが、その中にタルコフスキーやキラ・ムラートワ監督の処女作であろう短編映画を集めたプログラムがあった。もちろん、会場は満員。ギリギリに行ったら当然のように入れなかった。他にすることもないので、会場の前で待っていると、そのうち満員の会場で気分が悪くなった人が出てきて、受付の男性に手招きされた。彼は、ちょっと苦笑いしながら、入っていいよ、今から君の時間だ、と。
気分が悪くなった方には申し訳ないのだが、その時ムラートワ監督の短編を見た…。
フィリップ・ガレル監督の処女作『調子の狂った子供たち』もそうなのだが、そこに後年の才能のすべてがある、と言った作品だったのだ。
ほかにも、『木靴の樹』のエルマンノ・オルミ監督の新作(彼は、これからはドキュメンタリーを撮るそうで、これが最後の劇映画なのだそうだ)、アルノー・デプレシャン監督が家族を撮影した“personal family documentary”『L' aimée』などの上映もある。
きっと行ったら、自分の上映などそっちのけで映画を見てるんだろうな…と苦笑する。
砂の影』も、2/2にいよいよ公開となる。
明日は、朝早くから音響の菊池信之さんと上映チェックをする。たむらさんの映像もそうなのだが、菊池さんの音響は繊細で素晴らしく、何度か劇場に無理をお願いして音のチェックをさせていただく。是非、劇場で観て下さい。家のテレビについている小さなスピーカーでは、菊池さんの音を十分に堪能することはできないのだから。
昨日は、夜遅くから奥原浩志監督とお互いの家の近くで打ち合わせをする。
秘策を練る。二人とも盛り上がるが、これは本当に秘策なのか? しかし、面白い。でも、われわれが面白いと思うものは、どんなにメジャーだと思っても他の人にはマイナー過ぎるんじゃないか、と二人で少し落ち込む…。
砂の影』を作ってから、映画についていろいろなことを考える。何の役にもたたないかもしれないが、考えることが面白くてしかたがないのだ。瀧口修造の『近代藝術』、巌谷國士の『シュルレアリスムとは何か』を読み返す。瀧口の「物質の位置」と「狂花とオブジェ」という一文がすばらしく刺激的である。何を今更と言われそうだが、シュルレアリスムと映画は深く結びついていることを確信する。