踊るミシン

hogodou2008-01-19

寒い。ほんとうに寒い。
この幾日か、寝る前に本を読もうと布団から手を出したら、あまりにも手が冷たくなるので断念。本も読まないで眠る。もちろん血行が悪いのが一番いけないんだろうけど。
今週の頭に、『砂の影』の試写に来てくれたカメラマンの鈴木一博さんに会い、安藤尋監督のことをちょっと話したので、久しぶりに会おうと思って電話。留守電だったので、別の人と喫茶店で打ち合わせをしていると、そこへひょっこり安藤監督が現れる。あれあれ。彼もまたこの喫茶店で打ち合わせだと言う。思いがけず、お互いの打ち合わせ後に会うことにする。四方山話。悲しい話。相も変わらず伊藤重夫さんのマンガの話。エドワード・ヤンの『クーリンチェ少年街殺人事件』などの話。ロバート・ワイアットの話。不穏な企画の話などなど。そこへ、山口にいる大友良英さんから携帯に電話がある。なぜか、大友さんといる時に、どちらかの携帯に安藤監督から電話がかかり、安藤監督といる時に大友さんから電話がかかる、というシーンによく出くわす。安藤監督の作品のサウンドトラックのほとんどを大友さんが手がけている。なんだか、偶然にしても、できすぎてるな、と思う。
前に書いたことがあるけれど、伊藤重夫さんの作品が好きだ。学生時代、なにがきっかけだったのかは忘れてしまったが、伊藤さんのマンガに出会った。それが、本屋で読んだのが先だったのか、亡くなった太田省吾さんが主宰していた劇団、転形劇場が出していた雑誌『転形』(劇団員だった大杉漣さんが編集していた!)に掲載された伊藤さんの「君がいなくなったら 僕はダスト・マイ・ブルーム」を読んだのが先立ったのか…ちっとも思い出せない。
ともかく、それ以来、伊藤さんのマンガは、ずっと手許にある。『チョコレート・スフィンクス考』『踊るミシン』の2冊。その後、単行本に収録されていない『COMICばく』に掲載された「ママレードのプリンセス」や『Aha』に掲載された「オレン時」や「ダイヤモンド」を、ポツポツ買い集めたりしていた。北冬書房(『踊るミシン』の版元)の高野慎三さんは別にして、伊藤さんのマンガのことで盛り上がれる人は、周囲にはあまりいないのだけれど、安藤監督はその少ない仲間の一人。安藤監督は、学生時代、先輩だった佐々木敦さんに勧められて読んだという。それから後は、映画監督で脚本家の斎藤久志さん…。斎藤さんが、高野文子さんのマンガ「うしろあたま」を8mm映画にしてPFFに入選した時には驚愕したものだった。
田舎の高校の空き時間に、友人に読まされた高野さんの『絶対安全剃刀』の衝撃は未だに忘れられない。それからずっとこの寡作な作家の作品を心待ちにしているのだ。
伊藤重夫さんのマンガは、安部慎一の作品とともに、8mm小僧だった自分にとってこんな作品を作りたいと夢の具現化だった。というより、伊藤さんのマンガを読んで、こんな作品を作りたいと思っていたのだ。伊藤さんのマンガ『踊るミシン』の少女は、エドワード・ヤンの『クーリンチェ少年街殺人事件』のヒロインであるミンだと思います、と安藤監督。などほど、なるほど。なんでしてたっけ、あのミンの台詞。 「私はこの世界と同じよ、変わるはずがないわ」 。そんな少女なんですよ。
『踊るミシン』の映画を夢想する…。

さて、火曜日には、先日も告知した『砂の影』上映記念公開講座たむらまさき・撮影論」。まだもう少しお席があるようです。お申し込みは、こちらのメールまで。sunanokage@gmail.com 

詳しくは、『砂の影』公式HPで。http://sunanokage.com/
当日は、聞き手として映画評論家の筒井武文さんの参加も決定しました。

お時間があったら是非。