甲斐田祐輔監督『砂漠(仮)』のテレシネ作業

hogodou2007-08-21

山口小夜子さんが、逝ってしまった。
それを渡辺真起子さんからのメールで知る。今年の初め、『幽閉者』の大友良英さんのライブにいらしてくれて、久しぶりにお会いしたばかりだったのに。山口さんとは、鈴木清順監督の『ピストルオペラ』でご一緒させていただいた。もちろん、それだけなのだが、またいつかご一緒できればと機会をうかがっていたのだ。
とても悲しい。
今日は、甲斐田祐輔監督『砂漠(仮)』のテレシネ作業。ネガで撮影した8mmをイマジカで、撮影のたむらまさきさん立ち会いのもとにテレシネする。デジβにテレシネした素材を、これから編集するのだ。音のないラッシュを5時間分見る。面白い。フィルムは粒子だ。8mmだから、画面で見ると、もちろん16mmや35mmよりも目立つ。明るいデイシーンでは、目立たない粒子たちが、暗くなると一斉に流動し、震え、騒ぎだす。一見、静的な世界とは、実はこのような無数の震えによって成立しているのだ、と考えてしまう。当たり前ですよ、今頃気付いたんですか? とたむらさんにからかわれる。知ってます。知ってますけどね。目の当たりにすると、やっぱり興奮してしまいます…。
すごく好きなカットが幾つもある。
画面の右から緩やかに画面に登場する米村亮太朗さんの指がいい。
失敗した、成功した、もちろんいろんな事を思う。が、たむらさんが、自分の初めの頃のカメラに戻ったようだ、と言い、たむらさんが最近撮影した青山真治監督の『こおろぎ』や『サッドバケイション』の編集も担当してる大重くんが、いつものたむらさんの画と違う、フレームが横に広がって行くのではなく、縦に伸びていき、スタンダードのフレームが正方形に見えてくる、というように、様々な発見がある。
凄く好きな撮り方を見つけた。
全編、こんな撮り方で映画を創ってみたい。
別れ際、たむらさんが、これすごく面白いですよ、と一冊の本をバックから取り出す。伊藤比呂美の『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』。たむらさんの女性作家の読書量は驚くばかり。最近、伊藤比呂美の詩集『青梅』を古本屋で買って、久しぶりに再読したばかりだった。帰りに、買って帰る。