ワンピース

hogodou2007-08-09

甲斐田組の8mmフィルムは、全部アメリカの現像所に旅立った。どんな画になっているか、楽しみ。
今週は、月曜日、火曜日と渋谷のユーロスペースで上映されているPFFにワンピースの新作を見に行った。今回の『砂漠(仮)』にも出演していただいた鈴木卓爾さんと矢口史靖さんが、もう13年(!)も続けているプロジェクト。カメラはフィックス、ワンカット、アフレコなしという条件で作られた短編作品がワンピース。前々から卓爾さんから、その撮影の事をいろいろと聞いていた。現場で誘ってもらったので、楽しみにしていたのだ。
面白かった。矢口さんの作品は、やはりストーリーテラーとしての彼の才能がいかんなく発揮された作品群であるのだが、卓爾さんの作品は、フィックスの画面が映し出す“場所”の持っている“記憶”“時間”を問題にしている作品が多く、興味深い。特に、火曜日に上映された3本は傑作である。最初に上映された『種をまいたのはばあば』(タイトル間違ってたらごめんなさい)が凄い。詳しく説明するのがやっかいな作品なのだが、ある家に法事で帰って来た兄妹と、おそらく過去の、恋人同士だった頃の若き祖父母が、一緒の画面の中に登場し、その二組がそれぞれ微妙にダブりながら、それぞれのシチュエーションが同時進行に描かれる。つまり4人の役者がひとつの部屋を舞台に、ワンカットの中で、微妙にシンクロした別々のシチュエーションを二組に分かれて演じている…。それが、この家の、この部屋の経験した時間なのだ。田中要次さんほかの役者さんも素晴らしいが、唯野未歩子さんが、すべてが終わった後に、ふっと笑うの凄い。ちょっと説明しづらいので、もう機会があったら見ていただくしかない。3本目の田中要次さんと唯野未歩子さんがやはり兄妹を演じた最新作『ケーキを食べたのは誰?』(これもタイトル間違っていたらすみません!)は、まるでいい短編小説を読んだ味わい。カット尻の余韻がいい。
このワンピースの作品群、特に卓爾さんの作品に、映画のフレームについて考えさせられてしまう。
フレームの内、そしてそのフレームの外にも世界があるということ。
侯孝賢の『戯夢人生』、相米慎二の『ションベンライダー』が見たくなる。
上映後、卓爾さんや矢口さん、田中要次さん、猫田直さん、森下能幸さんたちと近くの店へ。卓爾さんと作品について、フレームについてたくさん喋る。彼と話すのは楽しい。
前に、卓爾さんは「些細な、小さな音を大きく増幅した映画を撮りたい」というようなことを話してくれた事があった。
そういう映画を作りたいと、僕も思う。
ヒロシマをさがそう 原爆を見た建物』という本を読む。
物が経験した時間について考える。
これは、たむらさんとよく話すテーマでもある。