エドワード・ヤンと大和屋竺

hogodou2007-07-08

台湾の映画監督エドワード・ヤン楊徳昌)の死を伝えられる。
激しくショックを受ける。彼もまた癌だったと聞いた。ヤン監督には一度だけ会ったことがある。『カップルズ』の頃だったと思う。シニカルな視線を持った、とても頭の良い人だった。かつて『クーリンチェ少年街殺人事件』『恐怖分子』の2本の作品の公開に関わった。傑作だ。まだ見ていない人は、是非見て欲しい。『クーリンチェ少年街殺人事件』の主演であるチャン・チェンたちの来日に立ち会った時、彼らは兵役を控えていた。兵役が終わったら映画を撮りたい。でも、3年間の兵役によって、自分が変わってしまうのが怖い。彼らは震えるように言った。
「地獄の様相を、即物的に、投げ捨てるように描くというなら、ハードボイルドの定型だが、映画はまだ、じつはそこ迄行っていないのかもしれない。今こそ映画のフレームを、慈愛あふれる神にではなく、悪魔の手に委ねなければならない」
これは、『クーリンチェ少年街殺人事件』と侯孝賢監督の『童年往事』を見た後に、大和屋竺が書いた映画評の末尾である。「悪魔に委ねよ」。ぼくらは、この大和屋さんの言葉からも、『クーリンチェ少年街殺人事件』からも遠く隔たってしまったように思う。そして、悲しい事だが、大和屋さんもエドワード・ヤンも、逝ってしまった。
21日から甲斐田祐輔組がクランク・インする。
全編8mmである。週刊文春に記事が載ったので解禁だと思うが、主演は江口のりこさん、ARATAさん、劇団ポツドール米村亮太朗さん。ほかに、矢吹春奈さん、光石研さん、鈴木卓爾さん、山口美也子さんが出演する。撮影は、たむらまさきさん、照明は平井元さんと胸が躍るようなスタッフが揃っている。スタッフルームに助監督たちが集まり、準備中。「始まった」と実感する。
明日は、カメラテスト。
果たして、どんな映画が出来上がるのか?
宮川淳を読みつつ、阿部良雄の『悪魔と反復 ボードレール試解』『群衆の中の芸術家』に手を出す。
夜、わが家の近くにチョウセンアサガオの群生を見つける。オキーフが描いた、強い匂いを持った花だが、夜になってその匂いはますます濃い。匂いに酔っぱらいそうになる。
今日のiPod HOSE 『HOSE』
奇才宇波拓率いるHOSEの初アルバム。凄い。