レベル・サーティーンのことなど

hogodou2007-05-29

どたばたと忙しい…。
いよいよ甲斐田祐輔組が始動する。尊敬するベテラン俳優のMさんの参加が決まる。また始まるのだ。今回のカメラは、たむらまさきさん。青山真治監督の『ユリイカ』や『SAD VACATION』の名匠である。それに、たむらさんも初めてという撮影方法をとる…。昨晩は、遅くまで製作部で打ち合わせ。明日は音楽、明後日、明々後日は撮影に関してと週末まで連日打ち合わせが続く。
Kとおおよそ5年振りくらいに再会する。彼女を、どう紹介すればいいのか…。生涯パンクス…。女優でもあり、服のデザインもしている。服装がグレーだと笑われる。でも、出会った時からそうだよね。そうだよ。なるべく目立たないように暮らしたいんだ。いろいろなことを話す。パンクって言ってもね、実はジャズが一番パンクなんだ、とK。ロシアについても少し話す。ロシアは、彼女にとって遠くて近い、近くて遠い国なんだと思う。新潟からウラジオストク行きの客船があるでしょ、あれを眺めて暮らすのに何だか憧れがある、というと、向こうの人たちは、あの船に乗って日本に行くのが夢らしいよ、と彼女が言う。面白い。握手して別れる。
夕方、宣伝部が出がけている映画『レベル・サーティーン』を再見する。
若干26歳の監督マシュー・チューキアット・サックヴィーラクルが撮ったタイ映画。破産寸前の若いセールスマンの男が、携帯電話から聞こえる謎の声に導かれるようにあるゲームに参加する。それは、「13」のゲームにクリアすれば3億円の賞金を獲得できるというもの。どうも彼は、顔の見えない誰かに、多くの人たちの中から彼が知らないうちに指名されたらしい。しかし、そのゲームは、彼の人間性と尊厳をひとつひとつ破壊して行く内容を持っていた。ゲーム感満載。リアルではあるが、細部につっこみどころも満載で笑ってしまう。
ネタバレになるので、あまり書かないが、見終わって、もしかするとタイの若者達は、日本の若者達以上に、自分たちの精神的な父親は“アメリカ”だと思っているのではないかと考える。ネットを駆使し、マクドナルドを食べ、コーラを飲み、“アメリカ”が生活の細部まで侵入し、自分たちの思考までを支配しているのではないか…。徹頭徹尾エンタテインメントでありながら、この映画のラストには苦い批評性がある。それが、面白い。そして、“アメリカ”は、その批評性=父殺しを内部に孕んだこの映画のリメイク権を既に買っているという! ハリウッドは、やはりすごい。毒までも自らの血を循環させるための栄養として喰らう…。
佐谷和彦『佐谷画廊の30年』を読む。
佐谷さんは、「オマージュ瀧口修造展」をライフワークとして続けている。
今日のiPod スティーヴ・レイシー『REFLECTIONS』
ソプラノサックス奏者スティーヴ・レイシーによるセロニアス・モンク