やさしい女

hogodou2007-04-21

これから製作に入る小さな作品の打ち合わせを、脚本家のKと共同プロデューサーのYと。
新潮45から入って、黙示録に至るような考えを話す。やってみよう。面白くなるはずだ。デフォーやカミュの書いた『ペスト』のことを話す。大学に入ったばかりの頃、名画座で映画をみまくった。田舎で暮らしていた高校時代、本や雑誌で読む映画を見たかったが、そんなの上映されるわけもなく、飢餓感の固まりだった。まだ、レンタルビデオもない時代の話だ。昔の映画は、テレビのオンエアーでしか見れなかった。1年間で400本くらい見た。年末に澤井信一郎監督に会った時、何本映画を見たか聞かれ、本数を告げると、馬鹿と言われた。本を読め、俺は文学を基盤にしている奴しか信用しない…。
そんなことをふと思い出す。
アマゾンから、ロベール・ブレッソン監督の『やさしい女』のビデオが届く。
英語字幕付き。日本では、ビデオもDVDも出ていない。ベストワンなんて決められないけれど、この映画のことがずっと好きだ。といっても、封切りの時、1度しか見ていない。でも、どんな映画が好きかと聞かれた時、かならず口に出す映画なのだ。東京国際映画祭ブレッソン特集をやった時も、わざと見なかった。今になって、どうして見たいと思ったのかは分からない。冒頭を見る。ちょっと打ちのめされるくらい感動する。17歳のドミニク・サンダと質屋の男が出会う回想まで、顔がうつらない…。ベランダのテーブルが倒れる。空をショールが舞う。車から降りる人々の足。うつぶせになった死体。ベッドに横たえられた死体の側で祈る老婆の下半身と組まれた手…。
結城信一を読む。レクイエム。そんな言葉が、これほど想起される小説家はいない。「バルトークの夜」を読んで、バルトークピアノ曲集『戸外にて』が聞きたくなる。
今日のiPod キース・ジャレット『STAIRCASE』
これもすごい。