幽閉者

hogodou2007-01-11

年が明けたばかりなのに、なぜかバタバタ。
東京ユーロスペースでの公開が2/3に決まった。足立正生監督の『幽閉者』のイヴェント各種、森崎東監督と打ち合わせ、奥原浩志監督作品の準備、今年の作品のいろいろな調整…。
今日は、ロフトプラスワンで『幽閉者』のトークイヴェント。
『新しい神様』の土屋豊監督に撮ってもらったメイキング・ドキュメンタリー作品『幽閉者たち』の上映もあった。トークは、足立正生監督、主演の田口トモロヲさん、四方田犬彦さん、宮台慎司さん、土屋豊監督。音楽に参加してくれただけでなく、映画にも出演してくれたジム・オルークや、サウンドトラックのジャケットをデザインしてくれたデザイナーの佐々木暁さんも来てくれる。土屋監督の『幽閉者たち』がいい。土屋監督でなければ撮れない決定的なシーンが、ある。そのような奇跡的な場所に居合わせる事も監督の才能であると思う。

せっかくだから『幽閉者』のことを書こうと思う。
足立正生監督と会ったのは、鈴木清順監督のビデオ作品の上映を渋谷ユーロスペースで企画した時、そのパンフレットに原稿をお願いした時だ。正確には、この時は電話のやりとりだけで会っていなかった。ちなみに、このパンフレットには、種村季弘さんにも原稿をお願いして、文章をいただいた。回りにいた人たちもだいぶ亡くなってしまった、大学の同級生では美術評論の宮川淳も死んで、あとは映画監督の吉田喜重だけ…と少し淋しそうにお話ししていたのが印象的だった。その種村さんも、もういない。

やがて、人を介して足立監督とお会いする事になった。渋谷の喫茶店でお会いした監督は、パレスチナから三十何年振りに日本に戻って、大島渚監督(足立監督は大島監督の『絞死刑』『東京戦争戦後秘話』などに参加している)が、ご病気でもう話す事ができないことが悔しい、お互い話をしたいことがたくさんあるのに、会う事はできても話す事ができない、それが何より悔しい、と目に涙を溜めて言ったのを覚えている。
「ぼくは、この三十年間一度も映画のことを忘れた事はなかった。撮りたい」

その時、手伝う事ができるのならば、この人の映画を作りたいと思った。しかし、それが、『幽閉者』という作品としてかたちになるのは、まだ1年も先のことだ。その時、足立監督との映画作りは、まだ何も具体的に何も見えていなかったと言っていい。

今日のiPod フレッド・フリス『STEP ACROSS THE BORDER』
シネノマドがフレッド・フリス追った美しい映像作品のサウンドトラック。1994年に他界した生田耕作さんの追悼文集『イクタコウサク』を読む。鈴木創士さんの「レクイエム」が収録されている。どこかいつも死への痛みに貫かれているような鈴木さんの文章が好きだ。『中島らも烈伝』も美しい。